この節では、glibc2をテストライブラリとしてインストールする方法について 説明します。オプション指定をしない限り、コンパイルしたものは、既存の ライブラリにリンクされます。かなりの数のファイルにパスを記述する必要 があるので、ソースからインストールを行わなくてはならないでしょう。
フルライブラリとアドオンのコンパイルに、i586@133, 64MB RAMで約3時間、 フル装備のi686@200では約30分かかります。
コンパイルにはいる前に、アーカイブからソースを展開する必要があります。 もっとも良いのは次の方法です。
 tar xzf glibc-2.0.6.tar.gz
 cd glibc-2.0.6
 tar xzf ../glibc-linuxthreads-2.0.6.tar.gz
 tar xzf ../glibc-crypt-2.0.6.tar.gz
 tar xzf ../glibc-localedata-2.0.6.tar.gz
 
これによりlinuxthreads,crypt,localedataディレクトリがglibc-2.0.6に 置かれ、configureがこれらのアドオンを認識できるようになります。
glibc-2.0.6ディレクトリに compileという名のディレクトリを作成し、 cdします。作業は全てそこで行います。これにより後片付けが楽になります。 (まだ、make cleanが完璧に動作するようになっていないからです。)
 mkdir compile
 cd compile
 
../configureを実行します。アドオンパッケージを使うためには、
--enable-add-ons=--enable-add-ons=linux-threads,crypt,localedata
のように指定する必要があります。インストール先のディレクトリも指定する
必要があります。/usr/i486-linuxglibc2というのが良いでしょう。
最終的に、コマンドラインは次のようになるでしょう。
 ../configure --enable-add-ons=linuxthreads,crypt,localedata --prefix=/usr/i486-linuxglibc2
 
コンパイルとチェックは下記の通りです。
 make
 make check
 
make checkがうまくいったらライブラリをインストールします。
 make install
 
ld.soから/lib/ld-linux.so.2へリンクを張ります。
 ln -s /usr/i486-linuxglibc2/lib/ld-linux.so.2 /lib/ld-linux.so.2
 
/libへのリンクを使うことで、安定版のglibcが
できたときに、メインのCライブラリとしてのアップグレードが容易になります。
/etc/ld.so.confを編集します。この際に。ライブラリのあるディレクトリ
名の後に/libを加える必要があります。つまり<prefix>/libのように
なり、前述の例で言えば、/usr/i486-linuxglibc2/libとなります。
/etc/ld.so.confを編集後、
 ldconfig -v
 
インストールの最後のステップは、gccが新しいライブラリを認識できるように
するための/usr/lib/gcc-libの修正です。まず、既存の設定をコピーする必要
があります。どの設定が現在使われているものかを調べるには、gccの-vオプ
ションを用います。
 % gcc -v
 Reading specs from /usr/lib/gcc-lib/i486-unknown-linux/2.7.2.2/specs
 gcc version 2.7.2.2
 
/usr/lib/gcc-lib/<システム>をテストシステムディレクトリにコピー
します。
 cd /usr/lib/gcc-lib/
 cp -r i486-unknown-linux i486-linuxglibc2
 
 cd /usr/lib/gcc-lib/i486-linuxglibc2/2.7.2.2
 
specsを編集します。
このファイルの中の/lib/ld-linux.so.1を/lib/ld-linux.so.2
に変更します。
また、%{...:-lgmon}と書かれた部分を削除します。
glibcはプロファイリングにgmonライブラリを使用しないからです。
サンプルのspecsファイルは
specsファイルのサンプル
セクションを参照してください。
新しいディレクトリの下に、ほかのディレクトリへのリンクを張ります。
 cd /usr/i486-linuxglibc2/include
 ln -s /usr/src/linux/include/linux
 ln -s /usr/src/linux/include/asm
 ln -s /usr/X11R6/include/X11
 
/usr/includeからファイルをコピーするか
リンクを張ります。(ライブラリによっては、glibc2と一緒に再コンパイル
しないと適切に動作しないものがあります。その場合、そのパッケージを
単にコンパイルして/usr/i486-linuxglibc2にインストールしてください)
インストール完了を確認するために、次のプログラムをglibc.cファイルとして 作成してください。
 #include <stdio.h>
 main()
 {
     printf("hello world!\n");
 }
 
 % gcc -b i486-linuxglibc2 -nostdinc -I/usr/i486-linuxglibc2/include -I/usr/lib/gcc-lib/i486-linuxglibc2/2.7.2.2/include glibc.c -o glibc
 
lddを使って、プログラムが古いlibcではなく新しいglibc2にリンクされたことを 確認します。
 % ldd glibc
 libc.so.6 => /usr/i486-linuxglibc2/lib/libc-2.0.6.so (0x4000d000)
 /lib/ld-linux.so.2 => /lib/ld-linux.so.2 (0x40000000)